ハイビジョン クラシック倶楽部 2009年5月15日 Bモード・ステレオ
鈴木秀美&平井千絵 コンサート
1アルペジョーネ・ソナタイ短調D.821 (シューベルト作曲)
2.チェロ・ソナタ第3番イ長調作品69 (ベートーベン作曲)
チェロ :鈴木秀美
フォルテピアノ:平井千絵
[収録:2007年4月18日,王子ホール]
2008年9月10日放送の再放送で9月11日当サイトで演奏者の紹介と評を記述しましたが、今回はそれとは別の点で考えてみたいと思います。
それは初めの曲のシューベルトのアルペジョーネ・ソナタである。シューベルトが1842年にウイーンで作曲した室内楽曲であるが、このソナタは、アルペジョーネのための作品としてはこれ1曲しかないのである。 そもそもこのアルペジョーネとは何かというと、物の本によると、1823年から1824年にウイーンのギター製造者ヨハン・ゲオルク・シュタウファーにより発明された6弦の弦楽器である。一般の弦楽器のように弓を用いて演奏するのであるが、型はチェロを小ぶりにしたような本体のために重音を出すことが容易であったようである。それに、ギターの特徴である24のフレットもついていて、一見バロック時代のヴィオラ・ダ・ガンバに似ている外見といえます。
この楽器のために作曲された、唯一の曲がこの名高いシューベルトのアルペジョーネ・ソナタなのである。しかし、この曲が作曲されたのは1824年だが、1871年になってようやく出版されたときには、すでにアルペジョーネは皮肉なことに忘れ去られた楽器になっていた、ということなのです。というわけで、実際にアルペジョーネはほとんど演奏されることなかったようである。このソナタの演奏は今回の演奏のようにチェロやヴィオラもしくはコントラバスで代用するのが普通である。
今回の演奏では5弦のチェロが使われていました。このチェロは古楽器にはいるもののようですが、エンドピンがないのも珍しい楽器でした。
古楽器といえば、平井千絵の弾くフォルテピアノも現代のピアノの音と随分違ったバロック調の音色がこの5弦のチェロとよきバランスがとれているように感じました。
アルペジョーネ・ソナタの作られた頃のシューベルトは当時相当な病の苦しみに悩まされていた時だけにこの曲を聴くたびに彼の苦悩ぶりを想い描いております。